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2009年のインプラント〜インプラント治療20年を振り返って〜

インプラント治療20年を振り返って

平成2年、大学院4年生のとき名大口腔外科で初めてインプラント治療に携わって早いもので20年になります。名大で3年、開業して16年もうすぐ52歳になりますがみんなからまだ若いといわれています。長年世界標準のスエーデン製インプラントブロネマルクシステムを使用してコツコツ実績を積み上げてきました。もう10年はバリバリやっていこうと思います。今までの経験を失敗もまじえてお話しします。

最も古い患者さん

平成2年に名大口腔外科で治療した患者さんです(男性・当時50歳)。

下に5本のインプラントを埋めました。9年後に上のアタッチメント義歯がぶっ壊れ総入れ歯になりました。昨年左下の歯も無くなり、インプラント1本追加して18年前のブリッジに継ぎ足して使ってみえます。

18年前に下にインプラント5本 上はアタッチメント義歯

  • 上のアタッチメント義歯は壊れ総入れ歯に

  • 下は一本植え足して修理

顎顔面インプラント

名大では腫瘍で顎の骨を切り取った方や目や耳を無くした方にインプラントを応用した治療を日本で始めてやらせてもらえる機会を頂き感謝しております。


上顎骨半側切除と
眼球摘出
   
磁石で維持する義眼

  • インプラントを2本にするバー

  • バーで維持する総入れ歯

下奥歯のインプラント

平成3年名大で治療した患者さんです。(当時38歳)
左下奥2本、5年で1本インプラントが折れました。ブリッジのネジが緩んだまま使っていたそうです。奥歯3本無いのにインプラントが2本、もう1本あれば今も大丈夫だったと後悔しています。奥歯は抜けた歯1本に対してインプラント1本が原則です。当時のブロネマルクは純度の高いチタンで強度が不足していました。

 

 

平成4年開業して初めて手術した患者さんです。(男性・当時37歳)
左下奥歯2本、今なら何てことない簡単な手術ですが、緊張して2本のインプラントがくっつきすぎました。。でもまだなんとも無く使えます。平成7年には左下2本、平成12年には上の前歯2本にもインプラント埋めました。もちろん経過良好です。

 

平成7年(女性・当時60歳)
左右のインプラントが1本ずつ結合しませんでした。ヘビースモカーで1週間の禁煙を守ってくれませんでした。「タバコはいかん」と実感させられました。でも2本ずつで13年使ってみえます。それ以後もタバコ吸った患者さんはいますが失敗はありません。

上奥歯のインプラント

平成8年初めて上の奥歯に埋めたインプラントです(女性・当時56歳)。この場所は骨質が弱く成功率が低いといわれていました。骨量は十分な方でした。手術は完璧と思ったのですが一番後ろのインプラントが脱落しました。ここまではチタンの表面が機械研磨しただけのインプラントを使っていました。今のような表面性状の粗いインプラントがあれば失敗は無かったでしょう。特に表面にハイドロキシアパタイト(HA)をコーテイングしたものは骨の状態が悪い場所で威力を発揮しました。


  • 上奥に3本の埋入

  • 後のインプラントが結合しなかった

  • 結局2本でブリッジ

  • HAコーティングは骨を誘導する

前歯1本のインプラント

平成9年事故で歯を失った若い女性でした。チタン製アバットメントの上にメタルボンド(金属の上にセラミックを焼き付けた冠)を入れました。少し暗い歯になってしまいました。当時、オールセラミックは強度が足らなくて使えませんでした。今なら新素材ジルコニアがあるのでもっときれいにできます。

   
  メタルボンドではどうしても暗くなる
ゴールドアバットメントとジルコニアクラウン

開業してから10年は手ごたえを確かめながら細々とやっていましたが少し自信がつき始めたら不思議と患者さんが増え始めました。世間でもインプラントが認知されるようになり患者さんにも勧めやすくなりました。

サイナスリフトはできるだけ避ける

上の奥は上顎洞というホコラがあり骨が足らない人が多く、サイナスリフトという骨移植をしないとインプラントができないことがあります。

サイナスリフト

でもこの手術はとても難しく自信がありませんでした。そこで上顎洞を避けてインプラントを傾けて植える方法をやることにしました。医局の後輩の勤める病院でCTを取ってもらいシンプラントというシュミレーションソフトにかけてもらいました。今ではこのソフトも当院にあります。歯科用CTも導入したいのですが二千万以上するので治療費を値上げしないと元が取れません。(平成13年この患者さんは当時59歳・女性です。)今は近所の矯正歯科に頼んで安く(12500円)撮ってもらっています。


  • 傾けて上顎洞を避ける

  • アバットメントで角度を調整

  • 金属のブリッジですが
    現在は全てセラミックです

それでも骨が足らない患者さんがみえるので後輩に頼んで病院でサイナスリフトしてもらっていましたが、手術を見学すると自分でもやれそうなので平成18年からは自分でやっています。この患者さんは平成18年(女性・当時54歳)骨移植と同時に2本のインプラントを埋め込みました。でもこの手術は結構ハラハラするし後が腫れて痛いのでできるだけしなくていいようにやっています。

無歯顎のインプラント

三年ぐらい前から総入れ歯の患者さんや残っている歯が全滅状態の患者さんが見えるようになりました。20年前名大では無歯顎の患者さんは全員二週間入院、全身麻酔で術後は顔がパンパンに腫れ、3‐6ヶ月待ってブリッジを作っていました。まさか自分が一人で無歯顎の患者さんのインプラント手術ができるようになり、当日仮のブリッジまで入るようになるとは思ってもみませんでした。


  • ”総入れ歯”のインプラント
    既製の歯を並べるブリッジ

  • 上下は別の日に手術しました

最初は6−8本のインプラントを埋め込み3−6ヶ月待ってブリッジを作っていましたが、皆さん調子がいいので自信を持ちました。そのころ西ヨーロッパでは抜歯と同時にインプラントを埋め込み(即時埋入)、仮のブリッジまで付けてしまう(即時荷重、いわゆるAll on4)という新しい治療法が確立され、成績がいい事を知りました。手術ビデオを何回も見て研究するといままでの経験から私にもやれそうだし、患者さんの負担も大幅に軽減されるので平成19年から採用しました。

今まで上顎で15名、下顎で7名の患者さんを治療しましたが上の二名を除いては上手くいっています。 


  • メタルボンドブリッジ

朝9時半から初めてブリッジをつけ終わるのが午後1−2時なので大変ですが、なんといってもインプラント治療の最高峰なので終わったときは達成感があります。患者さんに「お疲れ様でした」言うとかならず文句を言われるどころか「先生こそ長い時間ご苦労さん」とねぎらってもらえるので本当に歯医者冥利に尽きます。


  • 術前

  • 術後

失敗した二名の方の一人は1本が手術時の骨への固定不足、もう一人の方は4ヶ月待っている間に1本が脱落しました。お二人ともインプラントを埋めなおして入れ歯に戻ってもらって現在待機中です。まことに申し訳ありませんでした。失敗は教訓として、生かしています。

当院では明確な保障期間を設けていません。私はこれまで大きな失敗をして訴訟はおろか患者さんともめたことはありません。他の医療施設へ後始末を依頼したこともありません。失敗は全て自分でやり直して解決しています。最初予定した治療結果になるまでは追加料金などいただきません。自分の技量に応じて治療を進め、なるべく簡単で安全な方法をとって来ました。安全性の保障されていない材料は決して使いません。大掛かりな骨移植などしなくてもいい方法を身に付けています。

骨の少ない85才の女性でもこの通り

もちろん短期間でのやり直しは無料ですし、上部構造(冠やブリッジ)のやり直しは年数が経っていれば全てが私の責任ではありません。「10年も全て無料で保障しろ」というのは無茶だと思います。それに私が死んだら保証も何もないでしょう。自分のやった治療には自信と責任を持っているので、できるだけ費用のかからないように相談してやっています。

二十年いろいろ考え、調べながらやってきたのでそれなりの域に入ったと自分では思います。下の奥の骨のあるところに2−3本埋め込むのなら30分以内です。痛みや腫れは抜歯より少ないです。今では骨のない難症例の方を治療するのに生きがいを感じます。「より早く、より痛みが少なく、より長持ちしさらにより安く」を追及しています。バラバラ、ボロボロで恥ずかしくて歯医者にいけない方、ひどすぎて他院で断れた方ぜひご相談ください。

バラバラでも何とかなります


術後X-P

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