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保険でどこまでできるの?

 歯科では「保険診療」と保険が利かない「自由診療」が混在するため治療費がわかりにくく、またセラミックや金歯などの自由診療の料金も歯科医によってかなり差があるため金銭的なトラブルも起こりやすいようです。

 厚労省は「一応の歯科治療は保険でできる。」と言っていますが、あくまで“一応”で次のような治療は明らかに保険ではできません。

≪セラミックの歯≫

 金属の上にセラミックを焼き付けたメタルボンド冠や金属を使わずに全てがセラミックのオールセラミック冠やインレーは硬くて欠けやすいのが欠点ですが、自然な美しい色が出せます。保険外で一本10万円前後します。保険の白い歯には金銀パラジウム合金にプラスチックを盛り付けた硬質レジン前装冠があります。以前のものは数年でプラスチックが減って地の金属が見えてしまうことがありましたが最近ではかなり改善されてきています。
とはいえ向かい合う歯と接触する部分は磨り減ってしまい『かみ合わせ』に問題が起こることがありますし、微妙な色合いは出せません。全部で2万数千円なので保険の自己負担は5〜6千円です。

 しかし硬質レジン前装冠は前から3番目の犬歯までしか保険適応がありません。前から4番目と5番目の小臼歯も口を開けると目立つので白くして欲しいと言われますが、変色しやすく壊れやすいプラスチックのジャケット冠しか保険でできない現状です。

 もし前から5番目の第二小臼歯を抜いて、4番目と6番目の歯を支えにしてブリッジを入れる場合、4番目の歯は見えるので保険外のセラミックの歯で、5,6番目の歯は保険の金属の歯でやって欲しいと言われても、ひとかたまりの3本ブリッジに保険と自費を組み合わせるのは『混合診療』という違法診療になるのでできない相談なのです。このように一部でも保険適応されない療法や材料を使うと全て自由診療になるのです。

セラミック冠(表・裏)
 
セラミック冠・実例

メタルポンド(表・裏)
 
メタルポンド・実例

前装鋳造冠(表・裏)
 
前装鋳造冠・実例

 


≪金歯≫

 一般的に保険で使用されているのは金銀パラジウム合金(金パラ)です。保険適応には他に銀合金とニッケルクロム合金がありますが、粗悪でお話になりません。

 金パラは金12%、パラジウム20%とJIS規格で定められており、他は銀約50%、銅約10%なので実は銀合金です。金パラの機械的性質は優れており金合金に匹敵しますが、歯科用合金は金、白金、パラジウムの貴金属が75%以上含まれていないと化学的に安定せず口の中で溶けだします。

 すなわち金パラは生物学的に問題があり安全とはいえないのです。とくにパラジウムと銅は金属アレルギーを起こしやすいのでヨーロッパでは使われない傾向にあります。金パラは金合金の安価な代用品として日本だけで使用される歯科用合金なのです。

 ここ数年パラジウムの価格は投機的な動きで乱高下しており安定供給が困難になっています。現在金パラは1グラム約600円、金合金は約1600円ですので奥歯一本あたり3〜4千円の違いです。不況とはいえ日本人の歯が金パラだらけというのは情けない気がします。

≪インプラント≫

「高度先進医療」という制度を使えば大学病院でインプラント治療が保険で受けられると勘違いしている方がいますが、保険が利くのは検査と入院費だけでインプラントそのものは自費ですのでお間違いなく。

≪金属庄義歯≫

いわゆる金属でできた「入れ歯」。1本も歯が残っていない総入れ歯の場合、「特定療養費制度」を使えば保険でプラスチックの入れ歯を作った分の金額だけ安くなります。つまり20万円の金属床なら4万円ぐらい保険が利いて残りを自費で払えばいいのです。合法的な混合診療といえますが、お年寄りに説明してもまず理解してもらえません。わからなくて当たり前でしょう。

≪歯列矯正≫

原則的に保険外ですが、唇顎口蓋裂などの先天異常の患者さん、あるいは顎変形症で外科的矯正手術を前提とする場合は保険が利きます。

 

≪予防的処置≫

子供にフッ素塗布をする場合、虫歯がたくさんあれば保険が利きますが、虫歯のない子は自費になります。クリーニングやツルツルに磨いたりするのは原則自費です。

≪歯の漂白(ブリーチング)≫

神経を取った歯の漂白は保険でできますが(一歯400円しかついてません)、生きている歯は自費です。最近はやっていますが料金にはかなりのばらつきがあるようです。

 このように実際にはかなりの分野の治療で保険が利きません。保険には新しい治療技術はほとんど取り入れられておらず、まさに40年前の水準といえ、多様化する現代日本人のニーズにはとても応えられません。

 さらに保険の適応になっていても、料金が低すぎて実際に治療すると赤字になったり、手間暇の割にはほとんど利益のでないものもあります。たとえば神経を取って崩れてしまった歯に冠を被せるために金属で土台を作る場合、全部で2000円しかなく、材料代と技工料だけで足が出てしまうためやれないのです。

 また総入れ歯も点数が低く時間がかかる割に利益がほとんど出ないため調整などが十分にできない現実です。難しい親知らずの抜歯も治療に1時間以上かかっても11000円のため開業医では採算が合わず「病院の口腔外科で抜いてもらって」ということになるのです。

 このように保険の範囲が意外と狭く、不採算な部分が多いことが混合診療を生み出したり、自由診療のトラブルを起こしているのです。もちろん歯科医側にも問題がある場合がありますが、保険の範囲を拡大し、点数を適正化することが患者さんにも歯科医にとっても必要なのです。

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